アルゴン(Ar)
アルゴン(Ar)は希ガス(第18族)に属し、常温で化学的に非常に不活性であることから「反応させない」ための雰囲気ガスとして産業の隅々まで浸透している元素である。資源は空気中に安定に存在し地理的偏在が小さい一方、実際の供給は空気分離装置(ASU)・精製設備・高純度物流に強く依存するため、設備稼働やエネルギー価格、酸素・窒素需要(製鋼・化学など)の変動が供給制約として表れやすい。
参考ドキュメント
- Royal Society of Chemistry(RSC)Periodic Table: Argon(基本物性・概要) https://periodic-table.rsc.org/element/18/argon
- UCAR Center for Science Education(英語):Composition of Earth’s Atmosphere(大気組成の説明) https://scied.ucar.edu/learning-zone/atmosphere/composition-atmosphere
- 大陽日酸(日本語):深冷空気分離装置(ASUの説明:産業ガス製造の入口) https://www.tn-sanso.co.jp/jp/ja/gas/business/as/index.html
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト(日本語):化学物質(アルゴン)安全データの入口(窒息性・取扱い注意) https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-37-1.html
- NIST(米国標準技術研究所):Atomic Weights and Isotopic Compositions(同位体・原子量の根拠) https://physics.nist.gov/cgi-bin/Compositions/stand_alone.pl?ele=Ar
- 住友精化(英語):Argon Gas Recovery and Purification systems(回収・精製の一例) https://www.sumitomoseika.co.jp/en/product/gas/engineering/detail06/
- Linde(英語):Argon Oxygen Decarburization(AOD:製鋼でのAr利用の代表例) https://www.linde-gas.com/en/industries/metal-fabrication/aod-argon-oxygen-decarburisation
1. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 元素名 | アルゴン |
| 元素記号 / 原子番号 | Ar / 18 |
| 標準原子量 | 39.948(代表値) |
| 族 / 周期 / ブロック | 第18族(希ガス) / 第3周期 / pブロック |
| 電子配置 | |
| 常温常圧での状態 | 気体(無色・無臭) |
| 低温固体の代表構造 | fcc(低温で固化) |
| 代表的な酸化数 | 0(通常条件では化合物を作りにくい) |
| 主要同位体 | |
| 大気中存在比 | 約0.93%(乾燥空気の体積比の代表値) |
| 代表的工業形態 | 高圧ガス(ボンベ、カードル)、液化アルゴン(低温液体)、超高純度Ar(半導体・分析用) |
- 補足(アルゴンを元素として扱う際の要点)
- Arは「資源が空気にある」ため希少資源の議論になりにくいが、「製品としてのAr」は空気分離・精留・精製・充填・輸送の産業インフラに依存するため、需給は設備制約で動きやすい。研究や事業では、必要なのが一般工業用Arなのか、超高純度(UHP)なのか、液体供給なのかで制約点が変わる。
- 安全面では可燃性・毒性よりも「窒息性(酸素欠乏)」が中心論点であり、閉所・ピット・地下空間での管理が最重要になる。ガスそのものが無臭であるため、検知と換気が運用要件として立つ。
2. 歴史
発見の経緯(“空気の残り”からの同定)
- アルゴンは19世紀末に、空気から得られる窒素の密度差という“異常”を手がかりに、空気中に未知の成分が混ざっていることが示唆され、分離・同定へ至った。元素の発見が鉱石ではなく「大気」という混合物の精密測定から生まれた点は、計測精度が新物質を呼ぶ典型例である。
- 名前はギリシャ語の「怠惰/不活性」に由来すると説明されることが多く、化学反応しにくい性質が概念の中心に置かれている。以後の希ガス研究の拡張(Ne, Kr, Xeの単離など)に接続し、周期表の族概念の理解を強化した。
産業化(空気分離技術の成熟とセットで普及)
- アルゴンの工業利用が拡大した背景には、深冷空気分離(液化→精留)による酸素・窒素の大規模生産が成立し、その副生・共生としてAr回収が組み込まれたことがある。したがって、Ar単独の需要増だけで供給が伸びるというより、ASUの増設・稼働と同調しやすい構造を持つ。
- 20世紀後半以降は溶接・製鋼・照明に加え、半導体プロセス(スパッタ、プラズマ工程)で高純度Arの需要が拡大した。ここで「不活性」だけでなく「純度・不純物管理」が性能を規定する要件として前面化した。
3. アルゴンを理解する
電子構造(閉殻ゆえの“不活性”)
の閉殻配置により、通常条件では電子をやり取りする化学結合が成立しにくく、反応性が低い。材料プロセスでは、Arは“反応させない”ことで酸化・窒化・水分汚染を避け、対象材料の本来の反応だけを進めるための背景場として機能する。 - ただし“不活性”は絶対ではなく、極端条件(高圧、強電場、放電プラズマなど)では励起Ar(Ar*)やイオン(Ar⁺)が生成し、衝突・スパッタ・発光などの物理過程が主役になる。半導体・表面加工では、まさにこの「化学ではなく物理」の側面が価値になる。
大気中存在と同位体(地球化学と直結する“空気成分”)
- Arは乾燥空気中で約0.93%程度を占め、窒素・酸素に次ぐ主要成分の一つである。したがって“地球上のどこでも原料空気はある”が、分離設備のある場所でしか製品Arは得られない、というギャップが生じる。
- 天然Arの同位体組成は
が支配的で、これは地球内部での の放射壊変に起因する放射成因Arが大気へ供給されてきた歴史と結びつく。年代測定(K–Ar法、 Ar/ Ar法)では、この同位体化学が時間情報として利用される。
物性の直感(“反応しない・よく遮蔽する・重い”)
- Arは無色無臭で、一般に空気より重い(密度が大きい)ため、漏えい時に低所へ滞留しやすい。事故リスクは毒性ではなく酸素欠乏であり、局所換気や酸素濃度監視が本質的な対策となる。
- 低温では液化しやすく、液化Arは冷熱源・低温プロセスの媒体としても扱われるが、低温火傷や材料の脆化、急激な気化による圧力上昇など、ガスとは別種の危険性を持つ。用途設計では「気体Ar」と「液体Ar」を明確に区別するのが有効である。
4. 小話
“空気から作れる”のに供給が逼迫することがある理由
- Arは空気中に常に存在するが、製品ArはASUの運転条件と回収工程の余裕に依存するため、酸素需要の変動や設備停止がAr供給へ波及しうる。特に液体Arの供給は貯槽・ローリー輸送などの物流要素が強く、局所的に不足が起きやすい。
- そのため、研究設備や製造ラインでは、ボンベ供給からオンサイト供給、回収再利用、代替ガス(窒素など)への切替可能性まで含めた冗長性設計がコストと安定稼働の両面で効く。
“不活性”は材料を守るだけでなく、工程を単純化する
- Ar雰囲気は酸化・水分の影響を抑え、プロセス結果の再現性を上げる方向に働く。特に表面が敏感な金属粉末(AM用粉末)や高温溶湯、真空排気後のパージでは、Arが工程を“安定化”させる役割を担う。
- 一方で、Ar自体は化学的に寄与しないため、残留不純物(O₂, H₂O, N₂, 炭化水素)が支配因子になりやすい。実務上は「Ar純度」より「露点・酸素濃度・微量不純物スペック」を管理指標にする方が事故・欠陥に直結しやすい。
5. 地球化学・産状(地球上での存在形態)
大気・水・岩石との関係
- アルゴンは大気中に安定に存在し、水にも溶解するが、化学結合で固定されにくいため、基本的には“物理的に溶ける・閉じ込められる”形で存在する。地下水や海水中の溶存ガス、鉱物中の流体包有物(inclusion)に含まれるArは、温度・圧力・起源の指標になりうる。
- 岩石・鉱物中では、カリウムを含む鉱物が放射壊変で
を生成し、結晶格子に捕獲されることで年代情報が記録される。熱履歴でArが拡散・脱ガスするため、年代測定は“閉じ込め温度(閉鎖温度)”の概念と不可分である。
“資源”としての位置づけ
- Arは鉱床として採掘する対象ではなく、空気分離の副産物として得られる工業ガスである。したがって地政学は資源偏在よりも、エネルギー、設備投資、産業立地(製鋼・化学・半導体)の偏在として現れやすい。
- 国・地域での供給安定性は、ASUの台数・冗長性、液体供給網、輸入ターミナルなどの“インフラ”で決まる度合いが大きい。材料研究でも、スケールアップ段階でガス供給がボトルネック化する可能性を見込むのが現実的である。
6. 採取・製造・精製・リサイクル(プロセスと要点)
6.1 空気分離(ASU)での回収:酸素・窒素と同じ設備で作られる
- 深冷空気分離では、空気を圧縮・冷却して液化し、沸点差を使って精留することで酸素・窒素を分ける。アルゴンは沸点が酸素に近いため、主に酸素系の精留系統に“アルゴン塔(粗アルゴン回収)”として組み込まれて回収されることが多い。
- ここで重要なのは、Ar回収がASUの設計・運転条件(回収塔の有無、運転負荷、精留の余裕)に依存する点である。Ar需要が増えても、ASU側の増設や改造が追いつかなければ短期的には供給が伸びにくい。
6.2 精製(粗Ar→高純度Ar):酸素・窒素の“最後の数ppm”が勝負になる
- 回収された粗ArにはO₂やN₂が残りやすく、用途に応じて精留や触媒反応(脱酸素)などで純度を上げる。溶接・一般工業用では99.99%級、半導体・分析用途ではさらに厳しい不純物管理(露点、炭化水素、微量O₂など)が要求される。
- 高純度化では、濃度が下がるほど分離が難しくなるため、設備コストと運転エネルギーが効いてくる。研究用途では「純度グレード」と「実際に問題になる不純物種(O₂/H₂O/N₂/炭化水素)」をセットで指定するのがトラブル回避に有効である。
6.3 供給形態(ボンベ vs 液体供給 vs オンサイト)
- 少量・分散用途では高圧ボンベが扱いやすいが、輸送・交換作業と保安管理が運用負担になる。大量連続用途では液体供給(ローリー)やオンサイトASUが有利になり、供給形態の選択自体が工程設計の一部となる。
- 半導体・医療・研究など停止許容度が低い現場では、二重化(バックアップボンベ、予備タンク、複数ソース契約)が現実的な設計要件になりやすい。Arは“止まると困るが、止まってから増産できない”典型のユーティリティである。
6.4 回収・再利用(循環):純度要求が高いほど価値が出る
- 工程排気に含まれるArを回収し、PSA(圧力スイング吸着)や精製器で再利用するシステムが実装されている。特に高純度Arを大量に使う現場では、回収率と純度のバランスがコスト・CO₂の両面で効く。
- ただし回収は“混ざった不純物も一緒に回収する”ため、工程由来の汚染物(反応生成物、溶剤蒸気、粉体)をどう前処理するかが鍵になる。循環を設計する場合は、ガス分析(O₂、H₂O、THC等)とフィルタリングを同時に考える必要がある。
7. 物理化学的性質・特徴
7.1 代表的物性(温度・圧力条件で変わることを前提に見る)
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 沸点 | 87.3 K( −186 ℃) | 低温で容易に液化する |
| 融点 | 83.8 K( −189 ℃) | 低温固体はfccなどとして扱われる |
| 気体密度(1 atm, 0 ℃付近の代表値) | 空気より大きい | 低所滞留→酸素欠乏リスク |
| 反応性 | 非常に低い | “雰囲気”としての価値の根拠 |
| 電気的挙動 | 放電・プラズマで発光・イオン化しやすい | 物理プロセス用途へ展開 |
- 補足
- 工学的には「化学的に反応しない」ことが最大の特性だが、放電下ではArが励起・イオン化してエネルギー輸送を担う。したがって、溶接アークやプラズマ装置ではArは“反応しない媒体”であると同時に、“アークを安定化する媒体”でもある。
- 低温物性は、液体Arの取り扱い(断熱、ベンチレーション、圧力逃がし、材料選定)を規定する。気体と同じ感覚で扱うと、急激な気化や結露・凍結に起因する不具合が生じうる。
7.2 安全(窒息性、高圧・低温)
酸素欠乏の危険
- Arは無毒・不燃であるが、酸素を置換して窒息を引き起こす“窒息性ガス”である。特に地下ピット、タンク周辺、狭い実験室、局所排気がない場所では、少量漏えいでも危険になりうる。
- 無臭であるため人間の感覚で気づきにくく、酸素濃度計・換気・警報・作業手順(立入制限、複数人作業)が本質的対策となる。
高圧容器・低温液体の危険
- 高圧ボンベは物理的エネルギー(破裂・転倒)を持つため、固定・保管・輸送の保安が不可欠である。レギュレータの適合や油脂汚染の管理など、基本手順が事故防止の中心になる。
- 液体Arは低温火傷と急膨張の危険があり、密閉系では圧力上昇が致命的になりうる。液体供給では圧力逃がしと換気、耐低温材料の選定が“装置の仕様”として必要である。
8. 研究としての面白味
“化学しない”からこそ、物理過程のモデル系になる
- Arは反応性が低く、表面反応や腐食の複雑さを避けて、放電・衝突・励起・輸送といった物理過程を比較的クリーンに議論できる。プラズマ診断(発光分光、ラングミュアプローブ等)でも、Arは基準ガスとして扱われることが多い。
- 材料加工では、Arイオンのスパッタ収率やエネルギー分布が薄膜形成や表面損傷を支配し、装置条件(圧力、RFパワー、バイアス)と結果の因果関係を作りやすい。プロセス最適化の題材として“扱いやすいが奥が深い”位置づけである。
地球科学との接続(同位体比が時間・起源情報になる)
の放射成因は、鉱物に記録された時間情報として読み出せるため、材料の熱履歴という観点でも示唆が多い。熱で拡散・脱ガスするという性質は、固体中拡散や欠陥・粒界の議論と自然に接続する。 - 工学材料でも、封止・バリア・ガス透過の評価は“外から入るガス”と“中で生まれるガス”の双方を考える必要があり、Arは測定・トレーサとして有用な場合がある。
9. 応用例
9.1 産業用途の主軸
溶接・金属加工(TIG/MIG、ルートパージ、AM)
- アルゴンは代表的なシールドガスであり、溶融金属の酸化・窒化を抑えてビード品質と機械特性の安定化に寄与する。ステンレス配管の裏波(ルート)保護など、酸化膜が欠陥につながる場面で特に重要である。
- 近年の金属積層造形(LPBFなど)でも、Arはチャンバー雰囲気として広く使われ、酸素濃度・露点管理が造形欠陥(気孔、酸化介在)に直結する。ここではArの“量”より“清浄度”が支配因子になりやすい。
製鋼・冶金(AOD、取鍋精錬、攪拌)
- AOD(Argon Oxygen Decarburization)はステンレス製造で代表的で、酸素とアルゴンを組み合わせて脱炭を進めつつCrの酸化損失を抑える考え方として整理される。Arは反応そのものではなく、分圧・雰囲気制御と攪拌で反応を“都合よく進める”役割を担う。
- 取鍋精錬ではAr攪拌が脱ガス・介在物浮上・温度均一化に寄与し、品質と歩留まりに効く。巨大プロセスでのAr需要はASU稼働と結びつき、需給構造の背景要因にもなる。
半導体・薄膜プロセス(スパッタ、プラズマ)
- Arは金属薄膜のスパッタ堆積で典型的なプロセスガスであり、窒素のように反応して窒化物を作ることを避けたい場面で選ばれる。プラズマ中でAr⁺がターゲットへ衝突し、物理的に原子を叩き出すことで成膜が進む。
- ここでは微量不純物が欠陥や特性ばらつきにつながるため、UHP仕様とガス供給系(配管の脱ガス、パージ手順)の一体管理が必要になる。ガスは“材料”であるという認識が工程品質に直結する。
照明・断熱(封入ガス、複層ガラス)
- 白熱灯や一部放電灯では封入ガスとしてArが用いられ、フィラメントの蒸発抑制や放電特性の安定化に寄与する。化学的に反応しにくいことが、長寿命化の基礎となる。
- 建築では複層ガラスの中空層にArを封入し、熱伝達を抑えて断熱性能を高める用途がある。ここでは“反応しない・漏れにくい・熱輸送が小さい”という複合的な利点が効く。
医療・研究(窒息性の管理が前提)
- 医療分野ではArを用いる機器・手技が存在しうるが、いずれも“窒息性ガス”である点を踏まえた施設設計と安全管理が前提となる。研究でもグローブボックスや真空装置のパージでArが使われ、実験再現性を支えるユーティリティとして重要である。
- 分析・計測ではキャリアガスやプラズマ源としてArが関与する場合があり、ガス純度がバックグラウンドやノイズへ反映される。したがって「必要十分な純度」を見極めることがコスト最適化になる。
10. 地政学・政策・規制
供給構造:ASUとエネルギーに依存する“工業ガス”の性格
- Arの供給は空気分離設備の容量・稼働率・回収工程に依存し、酸素や窒素の需要変動がArにも波及する。電力価格・設備投資・定修計画が需給に効きやすく、短期の逼迫は「資源不足」ではなく「設備制約」として現れることが多い。
- 高純度Arは追加の精製・品質保証が必要で、一般工業用より供給の柔軟性が小さくなりやすい。半導体・研究用途では、供給契約とバックアップ設計(複数ソース、回収再利用)が実務上のリスク低減策になる。
日本国内の保安:高圧ガスの法令・運用が実装条件になる
- Arは高圧ガスとして容器・貯槽・配管で扱われ、保安上の手続き・設備基準・管理体制が導入条件になる。研究室レベルでも、保管量、換気、漏えい対策、容器固定などの基本が事故防止に直結する。
- また、窒息性ガスであることから、酸素欠乏危険作業の観点(閉所作業、地下空間)での管理が重要になる。材料や装置の性能議論に加えて「施設要件(換気・検知・手順)」を仕様として織り込むことが安全と稼働率を同時に守る。
低炭素・循環の論点:回収・精製は“脱炭素の設計変数”になりうる
- ArそのものはCO₂を出さないが、分離・圧縮・液化・輸送の電力が環境負荷とコストを規定する。したがって、オンサイト供給や回収再利用は、コストだけでなく電力起源排出の削減手段として意味を持つ。
- 高純度を大量に使う産業ほど、回収率・純度・装置安定性の最適化が効く。ガスは“消耗品”であると同時に、工程のエネルギー効率を左右する“プロセス資源”でもある。
まとめと展望
アルゴンは、閉殻電子構造に由来する不活性さを核として、溶接・冶金・半導体・断熱・研究装置など広範な分野の再現性と品質を支える希ガスである。一方で供給は空気分離・精製・物流という産業インフラに依存し、需要変動や設備制約が供給リスクとして顕在化しうる。今後は、高純度需要の拡大と、回収再利用・オンサイト化・品質モニタリングの高度化が同時に進み、材料設計とユーティリティ設計(ガス供給)がより密に結びつく方向が重要になる。
参考文献
- Royal Society of Chemistry(RSC)Periodic Table: Argon https://periodic-table.rsc.org/element/18/argon
- UCAR Center for Science Education: Composition of Earth’s Atmosphere https://scied.ucar.edu/learning-zone/atmosphere/composition-atmosphere
- 大陽日酸:深冷空気分離装置 https://www.tn-sanso.co.jp/jp/ja/gas/business/as/index.html
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト:化学物質(アルゴン) https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-37-1.html
- NIST: Atomic Weights and Isotopic Compositions(Ar) https://physics.nist.gov/cgi-bin/Compositions/stand_alone.pl?ele=Ar
- 住友精化:PSA Argon Gas Recovery and Purification systems https://www.sumitomoseika.co.jp/en/product/gas/engineering/detail06/
- Linde: Argon Oxygen Decarburization (AOD) https://www.linde-gas.com/en/industries/metal-fabrication/aod-argon-oxygen-decarburisation
- シントー溶接材料(例):シールドガス資料(Ar/CO2等の整理) https://shinto-welding.com/wp-content/uploads/2018/11/shieldinggas.pdf