Skip to content

WIEN2k の計算例

WIEN2k は全電子 FP-(L)APW+lo 法を用した第一原理固体計算コードで、電子構造・バンド構造・状態密度・応力最適化・スピン軌道相互作用 (SOC) などが可能である。ここでは「バルク結晶(例:TiC または MnO/FeSe)を例に,SCF 計算からDOS/バンド構造取得」までの流れを紹介する。

参考リンク

準備と構造定義

  • 対象構造(例:TiC NaCl 構造)を準備。
  • case.struct ファイルを作成(または CIF → struct 変換)
  • 初期格子定数・原子位置を記入,空間群・対称性を設定
  • init_lapw スクリプトを実行して初期化(近傍距離・原子球半径 RMT 等をチェック)

自己無撞着計算 (SCF)

  • メインスクリプト:run_lapw(通常モード)や runsp_lapw(スピン分極)を実行
  • 例:run_lapw -ec 0.0001 -cc 0.0001 のようにエネルギー収束(EC)・チャージ収束(CC)を指定。
  • 出力ファイル case.scfcase.dayfile をチェック:エネルギー変化、チャージ距離 (:DIS) を確認。
  • 収束後、必要に応じて格子最適化・内部座標最適化を実施

DOS/バンド構造計算

  • SCF収束後、DOS 計算用に x lapw1, x lapw2 -qtl, x tetra 等のスクリプトを実行。
  • バンド構造取得には k-点パスを定義し、x spaghetti 等を用いる。
  • 例:FeSe のチュートリアルでは x lapw1 –band, x lapw2 –qtl –band, x spaghetti を順につないでいる。
  • 得られた .agr / .ps ファイルを Gnuplot/Grace 等で可視化

応用設定:スピン軌道 (SOC)、ハイブリッド汎関数

  • SOCを含める場合は init_so を実行して、run_lapw -so または runsp_lapw -so で計算。
  • ハイブリッド汎関数 (例:mBJ, HYBR) を用いたバンドギャップ改善の例もあり。

注意事項・運用上のポイント

  • RMT(原子球半径)と RKMAX(基底拡大率)の設定が精度に大きく影響。
  • k-点密度・エネルギーカットオフ(ENCUT 相当)を適切に設定/収束確認することが重要。
  • SOC/高精度モードでは計算コストが急増するため、リソース(メモリ・並列数)を考慮。
  • 出力ログを grep :ENEgrep :DIS などで監視し、計算状態を把握。